ガソリンスタンドには「ハイオクガソリン」「レギュラーガソリン」「軽油」の3種類の自動車用燃料が販売されています。特に、ハイオク車指定の車に乗っている人であれば、その高い値段に頭を悩ませているのではないでしょうか。
ハイオクとレギュラー違いがよくわからないけれど、「とりあえずレギュラーを給油する」「ハイオクと書いてあるから、ハイオクを給油する」という人が多いのではないかと思います。
しかし、実際のところハイオクとレギュラーの2種類のガソリンの違いはほとんどありません。
そのため、エンジン設計が特殊なスポーツカーなどを除き、ハイオク指定のガソリン車であってもどちらのガソリンを給油しても問題ありません。ガソリン車であれば、ハイオクであってもレギュラーであっても給油することが可能です。
ただ、車にガソリンの指定があるのにはきちんとした理由があります。この理由を解説していきます。
ハイオクガソリンとレギュラーガソリンの違い
ハイオクガソリンとレギュラーガソリンの構成成分は、ほとんど同じです。これらの違いは2つの成分の混合比率です。
カルピスに例えるなら、原液と水をどれくらいの割合で割ったかによって味の濃さに違いが生まれます。これと同じように、原油の比率の違いによってハイオクになったりレギュラーになったりします。
原液の比率が高い液体、低い液体それぞれに名前がついているようなものです。
ガソリンを構成する2つの成分は「オクタン」と「ヘプタン」です。
2つの成分は、有機化合物という化学物質です。オクタンとヘプタンには、わかりやすくいうと以下のような特徴があります。
オクタン:燃えにくいが、燃焼したときにたくさんのエネルギーが発生する
ヘプタン:燃えやすいが、燃焼したときのエネルギーは少ない
この2つの成分の混合比率で「オクタン価」が決まります。
- ハイオクガソリン:オクタン価96.0以上
- レギュラーガソリン:オクタン価89.0以上
オクタンが100%でヘプタンが0%のとき、オクタン価100となります。オクタン価が0%でヘプタンが100%のとき、オクタン価0となります。すなわち、オクタン価96のハイオクガソリンであれば、オクタンとヘプタンが96:4の比率で混ざっているということになります。
ガソリン車は、ガソリン(気体)をシリンダーの中で圧縮して、スパークプラグ(点火プラグ)の静電気で点火し、爆発させてピストンを押すことで動力を得ています。
このとき、下の図のようにスパークプラグ(点火プラグ)から円心状に爆発が広がっていくのが理想です。
しかし、オクタン価が低くなるほどノッキング(エンジンからキンキンとか、カリカリと鳴る現象)が起こりやすくなります。
これは静電気で点火するときに円心状に順に爆発するはずであったのが、静電気の発生する部分から離れたところで圧縮熱による自然発火で爆発するために発生します。この自然発火はオクタン価が低いほど発生しやすくなります。
要は、スパークプラグ(点火プラグ)とは別の部分で発火することによって、異常な爆発が起こるようになるのです。
エンジン内部では「 吸気 → 爆発 → 排気 」の順番に、正確なタイミングで燃焼を繰り返しています。そのため、自然発火によって爆発のタイミングがズレると、その後の排気と吸気がスムーズにできなくなります。
そのため、適切なガソリンを使用しないと前述のノッキング(エンジンからキンキンとかカリカリと鳴る現象)が発生しやすくなり、スムーズな走行ができなくなります。
ハイオク指定車にレギュラーガソリンを給油しても問題ないか
ガソリン車の中には、ハイオクガソリンの給油を指定されている車が存在します。例えば、欧州からの輸入車は大半の車種が「ハイオクガソリン」指定です。また国産車であっても2,500cc以上のスポーツカーは「ハイオクガソリン」を指定されていることが多いです。
ただ、国産車であればハイオク指定の自動車にレギュラーガソリンを給油しても問題ありません。なぜなら、国産のハイオク車にはレギュラーガソリンを入れたときを想定したコンピューターが組み込まれているからです。
国産車のハイオク指定車は、燃焼のタイミングをコンピューターによって制御します。そのため、レギュラーガソリンを給油してもノッキングが発生しないようになっています。
ハイオク指定車があるのはなぜか
では、なぜハイオク指定の車があるのでしょうか。それは、ハイオクガソリンのほうが燃えにくいかわりに、爆発したときに大きいエネルギーを得ることができるからです。ガソリンエンジンというのは、空気とガソリンの混合気体をどれだけ圧縮して点火できるかで得られるエネルギーが変わります。
これは、トランポリンを飛ぶ場面を考えると想像しやすいです。ハイオクガソリンを「大人」、レギュラーガソリンを「保育園児」だと思ってください。
トランポリンは深く踏みこむほど跳ね返りの力も大きくなるため、高く飛ぶことができます。ただ、深く踏み込むためには体重が必要です。体重がある大人であれば深く踏み込んで高く飛ぶことができます。
しかし、保育園児の場合は大人ほど高く飛ぶことはできません。なぜなら大人ほど踏み込むことができないからです。
これは、エンジンも同様です。空気とガソリンの混合気体を圧縮できるほど(トランポリンなら踏み込むほど)、爆発したときにピストンを押す力が大きく(トランポリンなら飛ぶ高さが高く)なります。
レギュラーガソリン(保育園児)であると、ピストンで気体を圧縮しきる(トランポリで十分深く踏み込む)前に自然発火が発生してしまいます。その結果、ピストンを押す力が弱くなってしまうのです。
要は、回転数を上げて負荷を大きくするほど、レギュラーガソリンだと負荷に対応できなくなってしまうのです。ハイオク指定のエンジンは、ハイオクガソリンでないと性能を発揮できないということです。
ハイオクは高負荷のときに威力を発揮する
そのため、排気量の大きい車ほどハイオクガソリンの給油が指定されています。排気量が大きく、高速で走るスポーツカーは普通乗用車に比べて圧縮比(空気を圧縮する比率)の高い専用のエンジンが搭載されていることが多いです。燃焼過程での自然発火を防ぐ理由から、ハイオクが指定されているのです。
街中で回転数をあまり上げず、法定速度で走るような使い方であれば、ハイオク指定の車にレギュラーガソリンを給油しても問題ないことがほとんどです。これは、前述の通りコンピューターによる自動制御によって、圧縮する比率を変えて自然発火が起きないようにしているからなのです。
ただし、輸入車の場合はハイオク指定車にレギュラーガソリンを給油する際は注意する必要があります。
輸入車であってもコンピューターは搭載されています。しかし、国産車に比べると制御が不十分なために、ノッキング(エンジンからキンキンとか、カリカリと鳴る現象)が発生しやすいです。
なぜ輸入車のほうが国産車に比べてノッキングが発生しやすいのでしょうか。これは日本と海外ではガソリンの「質」がそもそも異なるからです。
国によって異なるガソリン事情
日本と海外では、レギュラーガソリンの「オクタン価」が異なります。
前述の通り、欧州車からの輸入車の大半がハイオクガソリンでの給油を指定されています。これには、当然ながら理由があります。
欧州ではハイオクガソリンのオクタン価は「98以上」、レギュラーガソリンのオクタン価「95以上」と決まっています。
一方で日本であれば、ハイオクガソリンのオクタン価は「96以上」、レギュラーガソリンのオクタン価は「89以上」と決められています。
つまり、欧州のレギュラーガソリンのオクタン価を満たすガソリンが、日本だとハイオクガソリンしかないのです。そのため、欧州車はハイオクガソリンの給油を指定しているのです。
余談ですが、アメリカ合衆国の場合はハイオクガソリンのオクタン価は「97」、レギュラーガソリンのオクタン価は「91」です。日本のガソリンとオクタン価が近いため、アメリカからの輸入車は国産車と近い感覚で給油することが可能です。
指定のガソリンを使うと結果的に安く済む
日本国内の場合は、オクタン価の違いでハイオクガソリンよりも、レギュラーガソリンの方が1Lあたり10円程度安いです。そのため、一度に50Lハイオクガソリンを給油している人であれば、1回の給油で約500円程度安くなるでしょう。
これまで述べてきた通り、国産のハイオク車(高排気量のスポーツカーを除く)にレギュラーガソリンを使用しても問題なく走行することは可能です。また、ハイオクガソリンとレギュラーガソリンは給油時に混ぜてもオクタン価が変化するだけなので、運転するのに特に問題はありません。
そのため、給油時の値段を考えると「今までハイオク指定であったのでハイオクガソリンを給油していたが、レギュラーガソリンにすれば安くなる。次回の給油からレギュラーガソリンに切り替えようか」と思うことでしょう。
しかし結論からいうと、ハイオク指定車にレギュラーガソリンを入れても、ガソリン代全体で考えれば安くなりません。それどころか、走れば走るほど損します。
なぜなら、ハイオク車にレギュラーガソリンを入れると燃費が約10%落ちるからです。レギュラーガソリンを入れたハイオク車は、信号機などで停止してる状態から発進するときにエンジンの回転数を余分に上げなければならなくなります。そのため、結果的にガソリンの消費量が増えるのです。
例えば、ハイオクガソリンを使えば1リットルで10キロメートル走行できた車であれば、レギュラーガソリン1リットルで9キロメートルしか走れないことになります。
このとき、レギュラーガソリンが120円でハイオクガソリンが131円と仮定します。日本の自家用車の年間走行距離が約1万キロメートルなので、1万キロメートルでガソリン代を試算してみます。
燃料:
走行距離 ÷ 燃費 × 1リットルあたりのガソリン価格=年間にかかるガソリン代
ハイオク:10,000km ÷ 10 ×131=131,000円
レギュラー:10,000km ÷ 9 ×120=133,333円(ハイオクガソリンより高い)
このように、安いと思ってレギュラーガソリンを給油して節約したつもりが、結果的に高くなってしまうのです。
さらに、高速道路では早い速度を一定に保つために、エンジンを高回転で回し続けなければなりません。そのため、下道以上にガソリンを消費します。その結果、燃費はさらに悪くなりガソリンの消費量は増えます。
以上の理由から、ハイオク車は指定通りにハイオクガソリンを給油することをおすすめします。レギュラーガソリンをいれるメリットが何もないからです。
目先のガソリンの安さに目がいってしまうかもしれませんが、乗り続けるほど燃料代全体ではハイオクガソリンを使ったほうが安くなります。
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